ニーズヘグ
説明パネルには「ニーズヘグ(敵意と悪意をもって切るもの)は、世界樹のとねりこユグドラシルの3番目の根をかじり、引きちぎる、龍に似た蛇のような野獣である。ユグドラシルは3つの方向に延びる根をもつ。一つは巨人ミーミル(記憶)の泉、記憶の源泉に通じている。ここは今まで起きた出来事すべてが反映されているため、知恵に満ちている。オーディンが泉の水を飲むため質に入れた彼の眼が入っている。もう一つの根はウルズの泉に延びている。他方、3番目の根は、ニヴルヘイム(地下にある死者の国)のフヴェルゲルミルの泉に下りて行っている。そこでニーズヘグが恐ろしいことをしている。」とある。
ニーズヘグは『古エッダ』「グリームニルの歌」[32]では「龍」となっている。同「巫女の予言」[39]では「死者の血をすすり」、世界が再生したとき「黒い飛龍、閃光をはなつ蛇ニーズヘグが、舞い上がり、翼に死者をのせて、野の上を飛ぶが、やがて沈むであろう。」(「同」[66])と記されている。地下にある死者の国は厳密にはニヴルヘルであろうが、それは極寒のニヴルヘイムのすぐ地下なので大きな違いではなかろう。このニーズヘグがユグドラシルをかじっていること、他の根がミーミルの泉、神の世界のウルズの泉に至っていることは、『ギュルヴィたぶらかし』15にある。「巫女の予言」[19]では、ユグドラシルは「ウルズの泉のほとりにいつも青々と緑の樹が、高く聳えている。」とある。また、『ギュルヴィたぶらかし』15では、ユグドラシルのそばで「神々は毎日そこで裁きをする・・。」とされている。しかし『古エッダ』「グリームニルの歌」[31]では、根は神の世界にではなく人間の世界に出ていく、となっている。また、オーディンがミーミルの泉の水を飲むために眼を質に入れたことは、『ギュルヴィたぶらかし』15と「巫女の予言」[28]にある。
